新リトルボイス誕生

<文:シンガーソングライター/秀機(ひでき)>

68.<母性本能への訴え>

地下の駐輪場に停めていた自転車に鍵を差そうとしたら
「チャリ~ン!」と
自転車のカギを柵の向こうの通路に落としてしまった。
拾おうにもサイクルラックが邪魔をして
柵の向こうに手を伸ばせない。
万里の長城のような長い柵の真ん中に自転車を停めてるため
柵の向こうに出て取りに行くとなれば
かなりの距離を歩くこととなる。
「それに万が一…」
万が一柵の出口に向かってる途中に
通行人の誰かが拾ってしまうと
状況がややこしくなる恐れもある。
そう考えるとやはりこの場にとどまり
目の前で誰かが拾ってくれるのを待つしかない。 
幸い、多くの人たちが地下鉄の駅からゾロゾロと歩いてきた。
ところが。
「オッサンは嫌だなあ」
「女子高生は無視するかも…」
どうしても声を掛ける相手を選んでしまう。
ん~ん、この中で
俺みたいなタイプに100%優しい人とは言えば…。
ふと母親と同じような年齢の奥様が通る。
「あっ!」

 

あの~っ!あの~っ!